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Oriveti bleqk Dynabird レビュー 〜 高解像度で素性の良いモニターライクなIEM

Oriveti bleqk Dynabird IEM Review
Sponsored Review
このレビューは、HiFiGo 様より試供品を提供いただいてのレビューですが、製品の評価は個人的に率直な感想を記載しています。
尚、商品の購入先リンクには各販売元が提供するアフィリエイト型収益化プログラムを利用している場合があります。

“Oriveti”「オリベティ」というブランド (≠「オリベッティ」)

ここ数年前から日本でも見かけるようになった、「Oriveti (オリヴェティ/オリベティ)」という香港を拠点とする(らしい) IEMブランド。
古い人間(笑)にとっては「オリベティ」と聞くと、昔日本でもOA機器の販売をしていた、イタリアの Olivetti (オリベッティ) 社をふと思い出してしまいますが、スペルや読み方も言語も違うので、おそらく語源も全く別だろうとは思います。

ちなみに、中国の商標検索サイトで探してみると、“ORIVETI” で1件「深圳市奥利威帝科技有限公司」という企業が申請した商標が見つかります。

中国語名も「奥利威帝」と当て字的な表記ですが、“Oriveti” というスペルは欧文言語圏の既存の言語には見つからず、オリジナル名と考えたほうが妥当な気がします。

Oriveti ブランドの成り立ちとコンセプト

Oriveti 公式サイトの “About Us” を見ると、次の様なことが書いてあります。

About Oriveti | Our Story, Mission, and Commitment to Quality

Image credit: Oriveti

オリベティ・ストーリーを知る - 至高のオーディオを創造する

ORIVETIは、最も耳の肥えたリスナーが日常的に使用するHiFi品質のオーディオ製品を提供する革新的なブランドです。

私たちは2015年に設立し、イヤホン/ヘッドホン業界における長年のエンジニアリングと設計の経験を強みにスタートしました。

この厳しく競争の激しい市場において、私たちは新しいアイデアを持った専門知識のあるブランドが登場する余地がまだあると感じています。ORIVETIは、サウンド、フィット感、快適性、信頼性の重要性を理解しており、世界中のリスナーを興奮させ、感動させる準備が整っていると確信しています。

おそらくOEM/ODM等で技術や経験を持ったエンジニアなどが集まってできたブランドではと推測されますが、これまでにリリースされている数々の機種は、店頭などで試聴した限りは好印象な機種が多い印象があります。

Oriveti の新コンセプトシリーズ「bleqk」

そんな Oriveti のIEMの中で、今回紹介するのは、従来のシリーズとは趣向の異なる「bleqk」という新シリーズの1号機となる「Dynabird」という機種です。価格は $99.99。

この “bleqk” というのは “Basic Line Exquisite Quality Kept” の略。「優れた品質を保ったベーシックライン」といったポジションのシリーズになりそうで、シンプルで低価格ながら音質には妥協がないというメッセージが込められているようです。

そして今回レビューする「Oriveti bleqk Dynabird」は、bleqk シリーズ第1弾として、シンプルな幾何学的デザインを特徴とした筐体が特徴的で、一通り試した上での印象として、サウンドのバランスも非常にうまくチューニングされており、「bleqk」のコンセプトを印象付ける意味合いもありそうな気がしています。(若干気になる点はありますが、後述)

そして現在すでに、「bleqk シリーズ」第2作となる「Lowmaster」という機種も発表されており、着々と展開が進んでいるようです。

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Oriveti bleqk Dynabird の製品コンセプト

今回レビューする “Dynabird” は、Oriveti の新シリーズ “bleqk” の第1号機でもあり、同ブランドの従来の機種とは異なるコンセプトを持っているようです。

Oriveti bleqk Dynabird | Single Dynamic Driver HiFi IEM

ORIVETIは、優れた品質とパフォーマンスを提供するというブランドのコミットメントを体現するプレミアムオーディオ製品の新ライン、bleqkシリーズを発表します。
“bleqk” とは “Basic Line Exquisite Quality Kept” の略で、最高レベルの品質を維持しながら、必要不可欠な機能を優先させたオーディオソリューションを作り上げるという、当社の揺るぎない献身の姿勢を表しています。

つまり、手の届きやすいベーシックラインながらも、必要不可欠なものを優先的に残してそれ以外をシンプルに削ぎ落としつつも、音質や品質には妥協しない献身的な姿勢での製品あるいはソリューション、というコンセプトのようです。

独自のデザインフィロソフィー


幾何学的デザインの美

幾何学的形状のクリーンでミニマルなエレガンスにインスパイアされ、見た目が印象的なだけでなく、耳に心地よくしっかりとフィットする形状を作り上げました。
精緻な角度と外形は、長時間のリスニングでも疲れを最小限に抑える、人間工学に基づいたフィット感を実現するよう、慎重に計算されています。

Image credit: ORIVETI

“bleqk”シリーズ第1号機となるこの「Dynabird」では、シンプルさをアピールする様な、同ブランドでは従来にないデザインを採用しています。

Image credit: ORIVETI

構成

Oriveti bleqk Dynabird はシングルダイナミックドライバー機という、イヤホン/IEMの基本となる構成ながら、シンプルなデザインを追求しながらも、各所に豊富な経験と知識からの工夫やチューニングを凝らしているようです。

Dynabird の心臓部
独自の9.2mmベリリウム・コーティング・ダイナミック・ドライバー

優れた剛性と軽量さで知られるベリリウムは、優れたトランジェント・レスポンスと伸びのある高域再生を可能にします。
この最新のダブル・チャンバー・ドライバー技術により、あらゆるニュアンスや ディテールを忠実に再現し、力強さとニュアンスを併せ持つサウンドを実現します。

サウンド・チューニングのために設計されたフィルター

完璧なサウンドシグネチャーを実現するには、ドライバー技術だけでなく、細部のチューニングや調整も必要です。
そのため、Dynabirdでは独自のフィルターを設計し、私たちの厳格な基準に合わせてオーディオ出力を正確に再現できるよう配慮しています。

Image credit: ORIVETI

音響性能

サウンドパフォーマンス
豊かな低音と伸びやかな高音によるダイナミックな音楽性

Dynabirdは、深くインパクトのある低音、豊かでディテールに富んだ中音域、クリスタルのような高音域のいずれにおいても、真にダイナミックで魅力的なリスニング体験を提供します。
すべての音、すべての楽器、すべてのボーカルが高い精度とリアリズムで再現されるため、お気に入りの楽曲に秘められた芸術性を存分に堪能できます。

Image credit: ORIVETI

Oriveti bleqk Dynabird 基本スペック

Brand: Oriveti Model: breqk Dynabird
ドライバー構成 ⌀9.2mm 1DD (Beryllium coated diaphram)
周波数特性 10Hz – 20kHz
感度 105±3dB/mW, 1kHz
インピーダンス 16Ω
歪率 0.08%
コネクター 0.78mm 2Pin
付属ケーブル/プラグ 取外し式ケーブル/金メッキ 3.5mm プラグ

パッケージと内容・付属品

Oriveti bleqk Dynabird のパッケージは驚くほどシンプルです。

内容・付属品

パッケージの内容と付属品は、びっくりするほどシンプルです。

  • 本体とケーブル (装着済)
  • セミハードケース
  • イヤーピース 2種類

以上です。取扱説明書等も特に付属しません。

セミハードケース

比較的コンパクトなケースに収納できるようになっていますが、中央のバンドが出し入れに邪魔で、横から突っ込む/引っ張り出す形になり、このバンドはなくてもいいんでは?とも。

イヤーピース

Oriveti bleqk Dynabird、イヤーピースでかなり悩みますが、2種類付属しているので、比較的あれこれ試せます。
が、個人的には白い弾丸型のもう1サイズ下がほしいところです。イヤピ沼の住人ならおそらく様々なイヤーピースを揃えていると思いますので、あれこれ試してみることをお勧めします。

装着感

Oriveti の他のシリーズの様なIEM型ではなく、TinHiFi C2 などに似た形状かつ耳甲介側には何もサポートがない形状のため、基本的にはイヤーピースでの固定がメインになります。
そのため、装着感が安定しかつ音響的にもぴったりなイヤーピースを見つけるのがかなり大変でした。また、少しの角度のずれで音が変わったり音導管が耳穴からずれやすく、かなり苦労しました。

基本的には、小径のイヤーピースで耳の奥まで挿入して固定するのが一番安定しますが、装着感の面では圧迫感を感じる場合もあるので、微妙なところです。

Oriveti 製品の付属ケーブルと本体側コネクタの仕様で気になる点

今回 Oriveti 製品をじっくり試して気づいたのですが、従来の機種も含めほとんどの機種で

  • ケーブルはリセス(本体側の凹み)付き端子用のタイプが付属している
  • IEM本体側にはリセス(凹み)がない

という他のブランドではなかなか見ない仕様で、ただでさえ外部からの応力でピンが曲がりやすい 2pin ケーブルなので、物理的強度が心配になります。


設計上、接続安定性を確保するなら、本体側端子をリセス(凹み)化しない場合は他のブランドの様にフラットタイプのケーブルを採用するのが定石かと思いますが、Oriveti ブランドの製品では、本体側がフラット 2pin 端子なのに、なぜ付属ケーブルにリセス付き端子用のケーブルを採用しているのか不思議です。

実際、使っている間に 2pin 端子が緩んできてピンの金属部が見える状態になることが何度もあり、その度に押し込み直す必要がありました。

試聴前の準備と試聴環境

Burn-in (エージング)

Burn-in (バーンイン) は計77時間ほど、いつもの「試聴用プレイリスト」のランダムリピート再生で行いました。

Burn-in の流儀や推奨する方法はその意義も含めて様々ですが、個人的な経験則から、ピンクノイズ系の連続音ではなく、自分が実際に聴く、幅広い周波数レンジや様々な波形、トランジェント等を含む100曲以上からなる、DAPやスマホ等ほぼ全てに入れてある「試聴用プレイリスト」で行なっています。

参考:試聴用プレイリスト ストリーミング版

試聴環境

今回試聴には、Astell&Kern KANN ALPHA および HiBy R5 Saber のほか、iPhone 15 に USB DAC として

等を接続したり、MacBook Pro 14"(2021) 上の Audirvana Origin Mac版 に上記 USB DAC を接続し、NAS上の音楽データの他、YouTube や Spotify 等の各種音源でテストしました。

尚、ドングルDACを使用する際は、USBケーブルとして各ドングルDACメーカー付属品より劇的に本来の音質に近づく ddHiFi TC09S を使用しています。

音質

💡注意
イヤホン/ヘッドホンの音の感想は、物理・生理的な違いや知覚・認知特性、嗜好などにより、感じ方の個人差が非常に大きいことに充分留意ください。IEC標準に準拠して測定された周波数特性グラフなども、もともとあくまで規格上の「標準耳」を仮定した上での参考値で、全ての人が測定グラフ通りに聴こえるわけではありません。

全体的な印象

Oriveti bleqk Dynabird、全体的にクセの少ないバランスのよい音を出してくれるように感じます。
「クセ」が少ないと面白みに欠けると思われがちですが、この Dynabird では無機的な淡々とした音にはならず、それぞれの音源が持つ「音楽性」をディティールまでうまく表現してくれるので、各音源の持つ魅力を引き出して聴かせてくれる印象です。

最新の洋楽 Pops よりは従来型の Rock 系サウンドがメインターゲットか?!

ただし周波数バランスは、どちらかというと中高音域主体で、低域からサブベースにかけて聴感上は急激に減衰して聴こえ、海外の Electronic Pops などを聴くと、サブベースのキックやベースは出てはいるものの、かなり控えめだったり、30Hz付近になると「出ているのにほとんど聴こえない」という状況になります。
様々なイヤーピースを試してみましたが、この傾向は大きくは変わりませんでした。

Image credit: Oriveti

現代の海外の Pops は、40Hz〜50Hz 前後のサブベース帯域のビートを多用する傾向が統計的にも年々高まっており、周波数特性という観点からは、最近の他ブラントの機種がトレンドに合わせて劇的にサブベースの再現性を向上させている中では、やや古さを感じるチューニングに思えます。
Oriveti bleqk Dynabird の周波数バランスの印象は、従来のバスドラム (80〜100Hz) などを中心に使った Rock / Metal 系などのバンド構成の音楽との相性がよさそうな特性で、おそらくそうした従来型音源構成の音楽をメインターゲットに開発・チューニングされているのでは?と思われ、そうしたユーザーにはかなり適しているのではないかと思います。

そのため、現代の Electronic Pop や EDM など Electronic Music を中心に聴くユーザーにはちょっと物足りない感があるかもしれません。個人的にはサブベースが全くもの足りませんでした。

モニターライクな解像度の高さ

音色の傾向は若干寒色系寄りな気もしますが、ほぼニュートラル。

解像度はこの価格帯の1DD機としてはかなり高く、楽器やボーカルのキメ細かなディティールまで感じられます。
オーケストラなどでは各楽器の音がしっかり分離し、音を重ねるシューゲイズ系の曲では、ミルフィーユの様に音が層状に重なった感覚も感じられるので、かなり解像度の高い機種といえそうです。

また、日本のポピュラー音楽のような、同時に同じ周波数帯で音が重なって鳴るような編曲の曲でも、それぞれの音を分離して聴き取れるような解像度の高さを持っているようです。
個人的には日本のポピュラー音楽をほぼ全く聴かないので、いくつか試した程度ですが、Hi-Fi指向のモデルのようにいかにも残念な感じにはならず、しっかりと曲としてのスケール感が感じられる鳴り方で、ボーカルとそれ以外の楽器群の分離感がかなりよい機種なのではと感じます。

さらに、空間表現の自然な広さが非常によく、上下左右と奥行き方向ともに同じ様に広がり、曲によっては広大な空間を感じられます。各音像の定位も解像度の高さと相まって、かなりピンポイントで頭外に定位します (これももちろん曲のミックス次第ですが)。

モニター機にも近い雰囲気も感じますが、モニター機ほどアラが目立つようなこともなく、「気軽なリスニングモニター風」といった感じで、音楽のディティールまで聴き尽くしたいという方にはうってつけかもしれません。

イヤーピースの種類や装着状態で音も装着安定性も変わりやすい

いわゆる「IEM型」ではないハウジングの形状から、イヤーピースの種類および装着時の微妙な角度等の違いで音が大きく変わりやすい傾向があります。
ノズルが長めなので、小径のイヤーピースを使い奥まで入れると装着安定性は高まりますが、装着安定性の高い大きめのイヤーピースを使うと、奥まで入らず耳から出っ張り気味になるためむしろ装着感が不安定になりやすく、最適なイヤーピースの選択が悩ましく、そこが難点でもあり面白いところなのかもしれません。

しかし製品コンセプトとして、シンプルな筐体デザインを採用したことで、使い勝手が犠牲になりがちになってしまった点は、「bleqk シリーズ」次作では是非改善してほしいところです。

空間表現

音の空間はやや広めで、上下左右+奥行き方向も自然な広がりが感じられる立体的な空間です。

基本的に音像定位や空間の広さは、概ね「音楽制作時のレコーディングとミキシングの処理次第」で決まりますが、どんなタイプの曲でも、空間表現の意図をうまく再現してくれる印象です。もちろん、日本の平面的なミックスの曲は平面的な音になり、海外の空間芸術的なミックスの曲は、頭外定位するリアルな立体感を感じられます。

水平垂直方向それぞれと奥行き方向とで極端な差がないため、自然な立体感が得られるのが、Oriveti bleqk Dynabird のポイントが高いと感じる点の1つです。

BT - Communicate (2003)
「音の魔術師」の異名も持つ BT のこの曲。とにかく立体的な空間音像定位や音のダイナミクスが際立っており、Dynabird の解像度の高さも相まって、気持ちよく「音の空間芸術」を堪能できます。

低音域〜サブベース

サブベース(超低音域)は、Oriveti ブランドサイトで公開されている周波数レスポンスグラフと、人間の聴覚の周波数特性に近い等ラウドネス曲線から判断すると、20Hz 付近まで聴感上フラットに聴こえそうなイメージですが、実際の聴感上はサブベース域がかなり減衰しており、予想よりも「サブベースが聴こえるはずなのに聴こえない」感じです。

10数種類のイヤーピースを試してみましたが、サブベースに関してはどれも似たり寄ったりで、サブベースにキック/アタックがあるイマドキの海外の Electronic Pops が軽めに聴こえたり、30Hzのサブベースが「聴こえるのに聴こえない」というもどかしい状態になりました。

トーンジェネレーターアプリでサイン波でその周波数の音を再生して聴く分には、概ね20Hz付近まではしっかり聴こえるのですが、どうも 60Hz→50Hz の間で聴感上では(物理的な音圧ではなく)かなり大きく減衰してしまっているようです。そのためか、実際の音楽で30Hz 付近にピークを持つ曲を再生すると、なぜかほとんど聴こえないという現象がおきます。

現代のK-POPを含む海外の Pops は、Electronic Pop 化が進んでおり、Rock などのバンド編成の音楽とは、使う音の構成や帯域が大きく違うことが多く、最新の音楽を「余すところなく」聴くにはやや苦労する印象です。
もちろん、海外の音楽はサブベースが再生できない環境でも充分楽しめるような編曲や音選びがされているので、致命的な問題ではありませんが、2024年リリースのモデルとしてはやや旧世代のチューニングの印象が個人的には残ります。(おそらく大多数の方には全く気にならない部分だとは思います)

60Hz 以上の低音域は、従来の Rock や Pops を聴く分には過不足感もなく低音の質感も全く問題なく、従来型編成の音楽に最適化されているように感じます。
おそらく Oribeti が bleqk シリーズ第1作「Dynabird」のチューニングコンセプトで想定した音楽のジャンルは、そうした従来型の音楽なのではという気がします。bleqk シリーズ、今後の機種ではどう変わってくるか楽しみです。

Armin van Buuren & Giuseppe Ottaviani - Magico
この辺りのサブベースは、比較的どの機種でも再生可能な帯域ですが、海外の音楽では Pops も含め、日本と違って今やこうしたサブベースのビートが普通になっています。
キック/ビートの周波数をサブベースに下げることで、周波数レンジを広くとれるため、メジャーな J-Pop のように中高音域に音を詰め込む必要がなくなり、PCM 16bit / 44.kHz で再現可能な範囲を充分にとれ、聴感上は日本のハイレゾ音源より高音質で超ワイドレンジな音に聴こえるようになります。

中音域

中音域、厳密には高音域の倍音成分も含みますが、非常にクリアでボーカルやメインの楽器が際立ちます。

特に音数の多い J-Pop 系の曲でも、同じ周波数帯に重ねられた楽器からボーカルがうまく分離されて聴こえるのは、ボーカルを楽器と重ねる編曲をしがちな J-Pop / J-Rock で「ボーカルをよりクリアに聴きたい」という方にはかなりオススメポイントになるかもしれません。

J-Pop だけでなく、海外の音楽でもボーカルがクッキリと聴こえる傾向は同様で、例えば YouTuber や VTuner などの「声」を聞くのにも適しているかもしれません。

全体の音の傾向はモニターライクながら、「声やボーカルが聴きやすい」という特性は、解像度の高さや周波数バランスのチューニングの巧みさも合わさって実現されているのではと思いますが、「Oriveti bleqk Dynabird」の意外な魅力ポイントかもしれません。

ReoNa - ANIMA
J-Popでアニメ主題歌系のサンプルとして以前買ってみた曲。独特な魅力ある声なので、周波数レンジとダイナミクスが狭くボーカルが埋もれ気味なミックスがとても残念だけど、Oriveti bleqk Dynabird で聴くと、ボーカルが同じ帯域の他の楽器の音からうまく分離して聴きやすくなる不思議。1:31付近からのサブベースの唸りもしっかり聴き取れます。(日本の音楽、サブベースの使い方に慣れていないのか、変な使い方をするw)
Daniel Powter - Bad Day (cover by ReoNa)
ReoNaさんのボーカルと歌唱力を聴くという点では、こちらの YouTube にアップされている動画の方が、上のリリース音源よりもはるかに高音質でボーカルの表現力がよりよく感じられます。

高音域

「Oriveti bleqk Dynabird」は、高音域も至ってスムーズで高い解像度をもちながらクセがほとんどんなく、伸びがあり抜けのよい高音域を楽しめます。

音楽の表情の表現に大きく影響する、高音域に現れる中音域の倍音成分の再現性が高いおかげか、それぞれの楽器やボーカルなどをリッチなサウンドで聴くことができ、ダイナミックドライバーやハウジングなどの絶妙な音響設計が活かされているのではと感じる部分です。

自分の耳では、8.9kHz と 11kHz 付近に若干のピークがあり、13.3kHz 以上になると急激に減衰するという特性。実際に様々な音楽を聴いた感想としては、シングルダイナミックドライバー機の中では、派手すぎず暗すぎず、かなりバランスのよい高音域〜超高音域といった印象があります。

ちなみに、歯擦音の刺さりは男性ボーカル、女性ボーカルともに自分の耳では全く感じず。

Armin van Buuren & MaRLo feat Mila Josef - This I Vow (Official Lyric Video)

総評

Oriveti bleqk Dynabird、Oriveti ブランドの製品をじっくり聴くのは今回が初めてでしたが、音響面での基本的な設計やチューニングの絶妙さはしっかりと感じられました。

しかし、「経験豊富なエンジニア」が最新の Electronic 系ポップミュージックの音の傾向にあまり通じていないのかどうか、チューニングとしてはやや古いタイプの特性に感じます。

この辺りは特に AFUL や THIEAUDIO など新興オーディオブランドの製品と比べると顕著で、往年の音楽や日本のバンド系などナローレンジな音楽を中心にを楽しむ層には、低品質な音源でもかなり底上げされたように聴こえるので、ターゲットユーザーとしてある程度狙いを定めているようにも感じられます。
そうした意味では、サブベースのローエンドを多用しない音楽を中心に聴く上では、音響特性としてはかなり優れた機種と言えそうです。

一方、新シリーズ「bleqk」のコンセプトが充分に各担当エンジニアに行き渡っていなかったのでは?とも思われるような、企画営業的に意匠デザインを優先したために、装着感や付属品などが若干犠牲になったように感じる部分が随所に見受けられ、公式Webサイトに掲げられた大々的なコンセプトとのギャップが目についてしまう点が、惜しいところです。

あとは、Oriveti ブランドの従来からの製品企画・パッケージング上の慣習なのだとは思いますが、本体側にリセス(凹み)がない 2 pin 端子に、付属ケーブルがフラットタイプではなく、リセス付端子用 2pin プラグのケーブルが付属しているというのは、各端子の本来の設計意図が無視された形で、物理的な外部応力への弱さから、個人的にフラット 2pin タイプの IEM のリケーブルにおいてもあまりお勧めはしないと以前注意喚起していた事項で、製品品質の考え方としても、ちょっと衝撃的でした。

ただ、リケーブルを楽しむ多くの方々ではあまり気にされていないらしい状況もあり、初心者にはちょっとお勧めはできませんが、この音さえ気に入れば、ある程度中国メーカー製IEMに通じた方には、かなりおすすめできる製品と思います。

メジャーな J-Pop など、音源品質がそれほどよくない音楽では、なぜかシングルエンドとバランス駆動とで音質が劇的に変わることがありますが、この機種はシングルエンドでも充分な音の分離が得られるため、バランスケーブルに換装することで、さらにその特性を際立たせられる可能性もありそうです。

自分が普段聴く音楽・音源では、シングルエンドとバランス駆動とでの音質の変化は

  • 低音の締まりが「若干」良くなる点
  • 出力が稼げる点

以外にほとんどメリットがなく、様々な機器との互換性のデメリットの方が大きいので、シングルエンドを常用しています。
ちなみに、低音の締まりは 4.4mm よりも、3.5mmからの変換アダプターを介さない 6.35mm 標準プラグのケーブルの方がより感じられます。個人的には。

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