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Celest Wyvern Black レビュー 〜 美しいデザインとサウンドのエントリー機♪ 高い遮音性と装着感 💡ただしリケーブル必須!

Celest Wyvern Black / Abyss

Sponsored Review
このレビューは、HiFiGo 様より試供品を提供いただいてのレビューですが、製品の評価は個人的に率直な感想を記載しています。
尚、商品の購入先リンクには各販売元が提供するアフィリエイト型収益化プログラムを利用している場合があります。

今回紹介する機種は、最近次々と新機種をリリースしている、Kinera のサブブランド Celest からリリースされた、Celest Wyvern Black (初期名 Wyvern Abyss) という $29.99 の低価格帯IEMです。

もともと Celest Wyvern という白いシェルの機種が昨年の夏に先行してリリースされており、そのブラックシェルバージョンという趣ですが、フェイスプレートに深い青と紫を基調にした非常に美しい立体的なデザインが施されており、かなり高級感が出ています。
本体のカラーやフェイスプレート以外にもケーブルやイヤーピースなどの付属品も変更されており、本体は実質新カラーで、付属品が異なる機種といった感じです。

しかし、フェイスプレートの凝ったデザインの加工にコストがかかっていそうで、価格を抑えるためか付属ケーブルの品質が、IEM本体が持つ性能を充分に発揮できないという残念なパッケージングになっています。そのため、すでに他の 0.78mm 2pin ケーブルを持っている方はそちらを使ったり、別途高品質な 0.78mm 2pin ケーブルを用意して使用することを強くお勧めします。そうしないと本来の音質で聴けないという、珍しい機種です。

ただ、ケーブルはなしと考えて本体だけでこの価格でも、その音質や性能からはかなりのお得感があります。

製品コンセプト

Celest Wyvern Black」(初期名称は Abyss) は、Celest の伝統的な古代中国の伝説をモチーフにした機種で、今年 2024年5月15日に中国で発売。昨年 2023 年の夏にリリースされた「Celest Wyvern」の新カラーデザイン&パッケージングバージョンとも言えそうな機種です。本体自体はベースとなる Wyvern と基本構成はほぼ同じようです。

Image credit: Celest

Wyvern「応龍」の伝説

Image credit: 凤鸣天音/Celest

中国語版解説をDeepL+百度翻译で和訳:

古代中国の天地創造の補説伝説で、飛龍、黄龍とも呼ばれる。 応龍は毛犢と羽嘉の間に生まれ、もともとは天界に住んでいたが、大地を開き、鳳凰と麒麟を生んだ。

応龍は9つの頭を持ち、それぞれ異なる顔と色を持ち、鱗で覆われ、2枚の翼と4本の巨大な爪を持ち、火を噴き、風雨を呼び、雷と稲妻を伴って大地に飛び込むと天地の風雨を操ることができる。 伝説によると、盘古の時代、黄帝は英龍を馬に乗せ、軍主蚩尤の首をはね、巨人族の夸父を殺した。 また、大禹が治水するのを助けるため、その尾を使って地面を川に引き込み、その間に大禹と協力して鉄の鎖で水の怪物・呉子奇を捕らえ、高い地位と名声を得たという。

おそらく日本人にとっては、英語圏向けの英語版の解説よりも中国語版の解説の方が、日本でも使われる用語が多く馴染みやすいのではと思います。

英国の中世に多く用いられた竜の紋章の図柄でもある “Wyvern” (ワイバーン) という名は、おそらくこの中国伝説の「応龍」に似たポジションにある、西欧で一般的なの伝説上の存在として選ばれたのではと想像されます。

構成とチューニングコンセプト

Image credit: Celest

構成自体は、前作の色違いの Celest Wyvern と同じで、チューニングコンセプトもおそらく同じですが、ダイナミックドライバー機のため、3Dプリンター成形の筐体に使用する樹脂の色による物性の違いや、フェイスプレートの装飾で絶対質量がおそらく増加していると思われるので、音質の微妙な違いがあるかもしれません。

Celest Wyvern Black 基本スペック

Model Celest Wyvern Black
ドライバー構成 ⌀10mm LCP振動板 ダイナミック型ドライバー
周波数特性 20Hz – 20kHz
感度 105dB
インピーダンス 32Ω
コネクター 0.78mm 2Pin
付属ケーブル/プラグ OFC/3.5mmプラグ

パッケージと内容・付属品

パッケージが驚くほどコンパクトなのに驚きました。
10cm × 7.1cm × 3.1 cmというサイズで、余計な場所をとらないのが好印象です。

内容・付属品

Celest Wyvern Black の付属品は必要最小限といった感じで、

  • IEM本体
  • イヤーピース S/M/L (Celest Custom 221 Vocal Tips)
  • 付属ケーブル (おそらく Celest Tiger Soul)
  • 説明書

のみ。IEM本体は、ケーブルが装着された状態で収まっており、自分に合ったイヤーピースを装着して、3.5mm 端子の保護キャップを外せばすぐに使えます。
が、この付属ケーブルがクセモノで、別のケーブルに交換を強く推奨します。(詳しくは後述)

装着感

シェル形状が qdc タイプの耳介への出っ張りがあるタイプで耳の形状にピタリとはまり、ノズル部の絞り込みと相まって装着感は非常に良好で、qdc と並んでトップクラスの装着感と思います。個人的には付属のイヤーピースでも充分なフィット感と音響特性が得られ、必要にして充分な印象です。

また、イヤーピースに頼らない耳への固定方式のため遮音性が非常に高く、ノイズキャンセリングイヤホンが原理的に苦手とする、20Hz付近の遠くの車のエンジン音や機械の動作音など、超低音域の遮音性も良好です。

試聴前の準備と試聴環境

Burn-in (エージング)

Burn-in (バーンイン) は計73時間ほど、いつもの「試聴用プレイリスト」のランダムリピート再生で行いました。

Burn-in の流儀や推奨する方法はその意義も含めて様々ですが、個人的な経験則から、ピンクノイズ系の連続音ではなく、自分が実際に聴く、幅広い周波数レンジや様々な波形、トランジェント等を含む100曲以上からなる、DAPやスマホ等ほぼ全てに入れてある「試聴用プレイリスト」で行なっています。

参考:試聴用プレイリスト ストリーミング版

試聴環境

今回試聴には、Astell&Kern KANN ALPHA および HiBy R5 Saber のほか、iPhone 15 に USB DAC/AMP として

等を接続したり、MacBook Pro 14"(2021) 上の Audirvana Origin Mac版 に上記 USB DAC を接続し、NAS上の音楽データの他、YouTube や Spotify 等の各種音源でテストしました。

尚、ドングルDACを使用する際は、USBケーブルとして各ドングルDACメーカー付属品より劇的に本来の音質に近づく ddHiFi TC09S を使用しています。

付属ケーブルの品質が「音楽の聴取に耐えない」レベルで絶望的!

今回の Celest Wyvern Black、どうやら付属のケーブル (おそらく「Celest 虎魄 Tiger Soul」) の品質が音質上のボトルネックとなって、IEM本体側の本来の音質性能を全く発揮できていないことが判明しました。

付属する被覆がグレーのこのケーブル、音質がひどくザラザラした音になり、高品質な音源の聴取には全く耐えられないレベルです。

同じケーブルが付属する “Celest Pandamon” を以前にレビューしていますが、ケーブルをこの Pandamon に付属するものに換装しても全く同じ現象が生じたため、ケーブルの個体の問題ではなく、このケーブル自体 (おそらく「Celest 虎魄 Tiger Soul」) の仕様または品質自体に何か問題があるのでは?と推察されます。

今回、ケーブルは Kinera Leyding に換装して試聴

サンプル提供元の HiFiGo さんにもこの付属ケーブルの件についてお伝えし、今回はたまたま手元にあった Celest の親ブランド Kinera の「Kinera Leyding」に換装 (リケーブル) して試聴を行いましました。

↑のAmazonリンク、HiFiGo の製品ASINコードが他の販売業者に乗っ取られて異様に高くなっている場合があります。もともと $69 のケーブルなので、そんなに高価なケーブルではありません (ただし急な円安のため、以前に比べると日本円では高価になっています)。もちろん他のブランドの人気のあるケーブルでもOKです。

ケーブルを換装した結果、劇的に音質が改善し、この機種「本来の音」が聴けるようになり、評価が大きく変わりました。
これは Celest ブランドにとっても非常にマイナスになりうるポイントですが、Celest Wyvern Black の $29.99 という価格からすると、別途ケーブルを買い足してIEM本体のみを利用したとしても、お得と言えるレベルの高音質と装着感、シェルの美しさが際立つので、買って後悔はないと思えるレベルの製品です。

ケーブルの変更で本来の性能を発揮できる Celest Wybern シリーズ

Celest Wybern および Wybern Black、付属ケーブルによってかなり損をしているように見えます。
この付属ケーブル、近い音で例えると、ちょうど酸化して緑化したケーブルで聴いたときのような粗々しい音です。

何らかのやむを得ない事情があったのかもしれませんが、本体と付属品を含めたパッケージングによる、製品の価格をベースにした販売戦略上のミスではないかと思えるほどで、中国本国の淘宝のCelest公式ストアだけでなく、AliExpress や海外の販売サイトや掲示板等でも付属ケーブル/リケーブルによる音質変化の問題が指摘されています。

Celest は新興ブランドでもありブランドのイメージにも響きかねないので、ここはぜひ、高品質なケーブルに変更した改良版の上位機種をリリースして汚名を挽回してほしいものです。また、IEM本体を開発したエンジニアさんたちの努力がないがしろにされているようでもあり、とても不憫に思えます。

音質

💡注意
イヤホン/ヘッドホンの音の感想は、物理・生理的な違いや知覚・認知特性、嗜好などにより、感じ方の個人差が非常に大きいことに充分留意ください。IEC標準に準拠して測定された周波数特性グラフなども、もともとあくまで規格上の「標準耳」を仮定した上での参考値で、全ての人が測定グラフ通りに聴こえるわけではありません。

全体的な印象

先に記載したように、今回のレビューは、付属のケーブルではなく、Celest の親ブランド Kinera の「Kinera Leyding」にリケーブルして試聴を行なっています。

価格帯からすると、全体的に非常に周波数バランスや質感表現が良く、驚きます。

音色の傾向がちょっと面白いのですが、「超低音域(サブベース)〜中高音域は暖色系」、「中高音域〜超高音域は寒色系」というシングルドライバーであるにも関わらず、周波数帯で音の質感が異なるというのが、特徴的です。

そのため、全体的な聴き心地は落ち着いて聴けるリスニング系という感じですが、高音域の金物系のディティールなどは繊細かつシャープに聴くことができ、リスニング系ですが高音域〜超高音域のシャープな感じがアクセントになる感じです。
かつ、シングルダイナミック型ドライバーのため、その質感の変わる境界はなだらかで違和感はなく、曲によってはかなり楽しく聴ける音にも感じます。

空間は適度な広さがあり、強いて言えば奥行き以外はやや広め。各音像の定位位置や距離感、音像の大きさなどはちゃんとわかる程度にしっかり再現されます。そのため、立体感のあるミックスの海外の音楽も全く違和感なく再現でき、さらに日本特有の立体感をなくしたJ-Pop系の曲も非常に近い位置でボーカルが聞こえるなど、意外に万能感があります。

装着感が qdc 並に非常に良く、独特な音色の面白さ、この価格帯で安価なケーブルを追加しても1万円前後なので、かなりお買い得感があります。
今後、付属ケーブルの問題でセールなどに出やすくなる可能性もあり、もともと安価な機種なので、0.78mm 2pin ケーブルをすでに持っている方なら、とりあえず買ってみても後悔はないでしょう。

空間表現

意外に、というと語弊があるかもしれませんが、空間表現の広い曲はちゃんと広く立体的に、空間表現が狭く平面的な曲はすぐ目の前でボーカルが聴こえるという、面白い特性を持っています。

立体感のある海外の曲は、奥行き感はそこそこに上左右方向に広大な空間を感じられ、立体感のない平面的な J-Pop やアニソンでは、ボーカルが至近距離で聴こえ、なんだこれは?という今までにない感覚。
オーケストラ曲も、奥行きはそこそこに各楽器の前後方向含めた位置は正確に再現され、高音域〜超高音域だけシャープに聴こえるという特性のおかげなのか、かなりおもしろい特性です。

人によっては、この音声空間表現にかなりハマる方もいるかもしれません。

低音域〜サブベース

30Hz付近のサブベースもクッキリさはやや怪しいですがw 明らかなぼやけ感はなく、しっかり鳴らします。そのおかげで、日本の音楽より遥かにワイドレンジでサブベースを多用する海外のPopsも、なんの違和感やサブベースの不足感や中低音域過多感もなくしっかり楽しめます。

この辺りは、製品解説にあるように、ハーマンターゲットカーブをベースにチューニングされているおかげと言えるかもしれません。 本当にここ最近の中国を含む海外のIEM/イヤホンのサブベースの再現性は劇的に向上しているのを感じます。日本の音楽の多くがほぼ全く使わない帯域のため、サブベース域は日本のメーカー製品や代理店オリジナルチューニング機が未だに満足に再現できない帯域のため、この先差がどんどん中国や欧州など海外メーカーと差が開いていきそうな気がしています。

Armin van Buuren & Garibay feat. Olaf Blackwood - I Need You (Aquadrop Remix)
低めのサブベース域にビートをシフトした、このサマー Remix が心地よく聴こえるか?は個人的に重要な事項です。Wyvern Black はこのサブベースのリズムを、クッキリさはアヤシイですがw、しっかりと再現してくれます。

中音域

中音域のボーカルなどは、かなり再現性が高いと感じます。
おそらくですが、先に挙げたように中高音域までは暖色系で、倍音成分を含む高音域から超高音域がシャープなおかげで、高音域の倍音成分がしっかり再現され、中音域〜中高音域の音び倍音に含まれる微妙なニュアンスも取りこぼさず、リッチに聴こえるのかもしれません。

もちろんボーカルだけでなく、楽器の音も同様で、妙にリアリティのある音で聴こえ、これはこの価格帯ではなかなか経験のない感覚で、一聴の価値のある音に感じます。

I Wanna Hold Your Hand (with lyrics) - Susan Wong
ややハスキーボイスが美しい Susan Wong によるカバー曲。高音域のシャープさと中音域のソフト感が合わさって、独特な心地よさを生んでいます。

高音域

高音域は、先述のようにシャープで非常に伸びが良く、超高音域まで伸びていく感覚と気持ちよさがあります。 中音域が暖色系のため、音が硬くなりすぎないというのも、魅力の一つかもしれません。そのおかげか、ボーカルは柔らかく高音域の効果音だけシャープに聴こえるという曲もあり、面白い効果が得られるように感じます。

Perfume - Laser Beam
ボーカルはソフトに、高音域のシンセがシャープに聴こえる面白い効果がわかりやすい曲。YouTube の音源より、↓のストリーミング音源で聴いた方がわかりやすいと思います。

総評

Celest Wyvern Black は、付属のケーブルは無視して使わずに、別のケーブルを使うことでそのポテンシャルを発揮するという、一見製品としてはNGに見えるパッケージングに出鼻をくじかれましたが(笑)、もともとの価格が $29.99 低価格なのもあり、ケーブルを追加してもそれほどの価格にはならず、むしろケーブルを交換することで劇的に化ける機種として、マニアのサブ機的な位置付けでかなりオススメです。

シングルダイナミック型ドライバー機ながら、音域による音色の違いが生み出す独特な効果は、各帯域の音色を揃えるのが定石のハイブリッドドライバー機でもなかなか味わえないもので、「この機種ならでは」を特徴づける部分かもしれません。

とにかく装着感がよいために何時間でも装着しっぱなしにできてしまうので、時々外すなど耳の換気は必要ですが、遮音性の高さによりノイズキャンセリングイヤホンと同様の効果を電源なしに手軽に得られるので、カバンに耳栓がわりに一つ忍ばせておくというのも良いかもしれません。「いつものイヤホンを忘れた!」「TWSイヤホンのバッテリー充電忘れた!」という時に救世主になること請け合いです。

個人的にもともとリケーブルは特に積極的に行わないタイプで、今回の試聴も、Kinera Leyding 1本で楽しみましたが、この機種は付属ケーブルが致命的にNGなため、ケーブルを色々変えて楽しむにもうってつけなので、ケーブル沼に誘いたい人に勧めるのも面白いかもしれませんw 隠れたオススメ機です!

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