Sponsored Reviewこのレビューは、NiceHCK 様より試供品を提供いただいてのレビューですが、製品の評価は個人的に率直な感想を記載しています。
尚、商品の購入先リンクには各販売元が提供するアフィリエイト型収益化プログラムを利用している場合があります。
「NiceHCK」(当初は「HCK」だったような?)と言えば、AliExpress を長く利用している方にはお馴染みの、ポータブルオーディオ関連セラーですが、数年前から「NiceHCK」ブランドで独自製品をリリースし、中国でのヘッドホン展示会にも出展するなど、新たな動きを見せています。
- NiceHCK Audio Store - AliExpress (2015.7 オープン)
- NICEHCK Official Store - AliExpress (2019.9 オープン)
- 深圳市华创可欣电子科技有限公司 (Shenzhen HuaChuang Kexin Electronic Technology Co., Ltd.)
NiceHCK Audio Store には、個人的には AliExpress にオープンした当初の8年程前からお世話になっていましたが、今回「NiceHCK ブランド」のオリジナル製品ということで別経路で直接オファーを頂き、レビューさせていただくことになりました。
近頃の低価格帯機の性能向上は著しい
「NiceHCK DB2」は 1D + 1BA のハイブリッドドライバー構成で、おそらく1DD 構成の「DB1」の上位機種と思われますが、標準価格が $41.80、実売 $22.99、Amazon Japan では HiFiGo から ¥3,980 ¥3,950 という低価格帯で販売されています。
ちなみに、オファーを受けた段階ではまだ製品詳細が出ておらず、まさか「Waifu」パッケージだとは露知らずでw、後に AliExpress 等で製品仕様を調べて気づき、一瞬「これチューニング大丈夫かな?」という不安に駆り立てられました(笑
Image credit: NiceHCK
というのも、中国では「ACG (Anime, Comic, Game)」音楽という表現があり、そうした音源に特化したチューニングの機種があったりするためです。そうしたこともあり、基本的にレビュー依頼では「美少女イラスト (Waifu) パッケージの機種はお断り」しているので、先に知っていたらお断りしていたと思います(笑
しかし、NiceHCK DB2 に関しては最終的にはそれは杞憂で、かなり素性がよく幅広いグローバルなジャンルの音楽を楽しめる音質・性能を持っていました。
ただ、マーケティング的にオリジナルキャラクターなどで注目度を集める手法は、ターゲットユーザーをあえて特定の層に絞り、その特定の層への訴求度を高めるのが狙いと思われ、そうしたキャラクター文化を好まない層は敬遠することを考えると、これだけニュートラルな特性かつ見た目も美しい機種でその手法をとる意図は一体なんだろう?と思ってしまいます。短期少量生産の機種であればとても有効な手法だとは思いますが。
Amazon Japan
AliExpress
NiceHCK DB2 の製品コンセプト
Image credit: NiceHCK
NiceHCK DBシリーズ
NiceHCK DB2 は、IEMタイプのイヤホン「DBシリーズ」の中では、先にリリースされている「DB1」(1D機) と「DB3」(2D+1BA機) に続く、1D+1BA 構成の機種ですが、価格帯としては DB3 よりも上位に位置するようです。
NiceHCK DB1 | NiceHCK DB3 | NiceHCK DB2 |
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DB2 の製品本体は NX シリーズの上位機種「NX7 MK4」(2D+4BA+1PZT) のシェルとフェイスプレートを流用したような外見で非常に高級感があり、とても4千円弱の機種には見えません。
その分付属のケーブルはシンプルなものが付属していますが、AliExpress の NiceHCK 公式ストアでは、4.4mmプラグのアップグレード版ケーブルをバンドルしたものも販売されています。
個人的な推測ですが、NX7 MK4 のシェルを活用することで高級感のある高精度でビルドクオリティの高い本体を量産効果による低コストで採用し、そこにシンプルでオーソドックスな 1D+1BA のハイブリッドドライバーを搭載することで、素性のよい音質やキャラクターをもたせ、ケーブルやイヤーピースでのアップグレードやカスタマイズを楽しめるモデルなのでは?という気もします。
参考:NiceHCK NX7 MK4
NiceHCK DB2 の意外に洗練された構成
Image credit: NiceHCK
NiceHCK DB2 の構成は一見比較的オーソドックスなハイブリッドIEMの構成ですが、ハウジング(キャビティ)に強靭なポリカーボネイト(PC)樹脂を採用し、フェイスプレート側は金属製のプレートにレジン製の美しいパターンを重ねた複合素材シェル構造になっており、これは外観が美しいだけでなく、ダイナミックドライバー搭載機では避けられない、シェルの素材による「鳴き」を生じる固有振動数のコントロール面でも有利に働いていそうです。
また、ダイナミック型ドライバーは、DB3 の流れを受け継ぎ洗練させたような「グラフェン製ダイアフラム+チタニウムコート」となっているようで、サブベース域においてもレスポンスの良さが期待できる素材と構成に見えます。これまでにDBシリーズやNXシリーズなどでさまざまな構成や素材のダイナミックドライバーを採用していますが、その最新世代機として低価格帯ながらうまく洗練された設計になっている感があります。
NiceHCK DB2 基本スペック
Model | NiceHCK DB2 |
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ドライバー構成 | ⌀10mm 1D (Titanium Plated Graphene Diaphram) + 1BA |
周波数特性 | 20Hz – 20kHz |
感度 | 107dB/mW |
インピーダンス | 16Ω |
コネクター | 0.78mm 2Pin |
付属ケーブル/プラグ | 高純度OFC/3.5mmプラグ |
NiceHCK DB2 は感度が比較的高く、インピーダンスも低めのため、スマホや小型プレイヤーなどでもボリュームを上げずともかなり鳴らしやすい印象があります。
パッケージと内容・付属品
パッケージは完全に萌え絵 (Waifu) パッケージですw
先着で缶バッジまでついてくるようですw
しかも、外側のスリーブを外しても、さらに萌え絵、箱を開けてもさらに萌え絵…とちょっとやりすぎ感を感じずにはいられません(汗
ちなみに、DB2 のこのキャラクターは「Tian Hui」という名前のようです。
内容・付属品
付属品は低価格帯の機種としては非常に良心的で、ソフトポーチやケーブルバンドなど、日常遣いに必要そうなものは全て付属している点はなかなか好評価できる点です。
さらに、イヤーピース (EarTips) は、黒い球形のものと、どこかでみたことあるような AET07 風味のものと、2種類付属しています。
後に気づきましたが、この機種、イヤーピースによって空間表現が劇的に変化します! その詳細は音質編で解説しています。
装着感
NiceHCK DB2 はノズルが短めということもあり、装着感は非常に良好で耳にぴたりとハマり、長時間装着していても痛みや疲れがありません。しっかり奥まで装着すれば遮音性もかなりあります。
また、付属ケーブルの撚り方が起伏が少ない方式のため、服などに触れた際に生じるタッチノイズが非常に少なく、絡まりにくいのもポイントが高い点です。
試聴前の準備と試聴環境
前提としてあらかじめ記しておきますが、同じ NiceHCK の既存機種である DB1 や DB3、NXシリーズ等は聴いたことがないため、同社の他のラインナップとの比較はしていません。その代わり、ほぼ同価格帯 (近頃は為替変動が大きいのでUSDベースで $20〜$30 クラス) の機種との比較はした上での感想となっています。
Burn-in (エージング)
バーンインは、説明書に「50h 推奨」とあったので、いつもと同様DAPに入れてある「試聴用プレイリスト」をランダム再生し続ける方法で 65h 程実施。
試聴用プレイリスト
- Spotify版: Audio Check Express - playlist by azalush | Spotify
- YouTube版: Audio Check Express - YouTube
試聴環境
今回試聴には、Astell&Kern KANN ALPHA および HiBy R5 Saber のほか、iPhone 15 に USB DAC および Bluetooth レシーバーとして
- Shanling UA3 (AK4493S)
- HiBy FC6 (R-2R DAC)
- HiBy FC3 1st gen (ES9281AC PRO)
- Cayin RU7 (1bit DAC)
- FiiO BTR5 (ES9218P)
- Apple USB-C - 3.5 mmヘッドフォンジャックアダプタ
等を接続したり、MacBook Pro 14"(2021) 上の Audirvana Origin Mac版 に上記 USB DAC を接続し、NAS上の音楽データの他、YouTube や Spotify 等の各種音源でテストしました。
尚、ドングルDACを使用する際は、USBケーブルとして各ドングルDACメーカー付属品より劇的に本来の音質に近づく ddHiFi TC09S を使用しています。
音質
💡注意イヤホン/ヘッドホンの音の感想は、物理・生理的な違いや知覚・認知特性、嗜好などにより、感じ方の個人差が非常に大きいことに充分留意ください。IEC標準に準拠して測定された周波数特性グラフなども、もともとあくまで規格上の「標準耳」を仮定した上での参考値で、全ての人が測定グラフ通りに聴こえるわけではありません。
全体的な印象:全周波数帯でクセが少なくこの価格帯ではワイドレンジさが際立つ
まず一聴して驚いたのは、超低域から超高域までの周波数バランスのよさ。
$20クラスの低価格帯の機種というと、どこかクセや色付けの強い部分があったりすることが多い印象がありますが、NiceHCK DB2 はパッと聴きでもそうした「クセ」らしきものをほとんど感じません。また、先に挙げた試聴用プレイリストのあらゆる音源タイプ/ジャンルの曲を聴いてもどんな曲も破綻なく聴ける印象です。
また、何かクセを感じるとすれば、再生する音源や再生機器側の持つ音のクセが非常に出やすい、という印象です。
音の傾向は暖色系でも寒色系でもなくニュートラルに近く、再生する音源や再生機器の温度感や質感をかなり忠実に反映するようで、どんなタイプの音源をどんな機器で再生するかによって大きく印象が変わる傾向を感じます。
たとえば、iPhone 15 に Apple 純正の USB-C to 3.5mm DAC内蔵アダプターケーブルを介して聴くと、その音の「粗」やチープ感が気になってしまうくらいには優秀で、ドングルDACなどを使うと滑らかな音になったり、そうした違いも明白に感じられる程の再現精度があるとも言えるかもしれません。
また、メーカーが提供する周波数特性グラフではサブベース(超低音)の帯域が30Hz未満でも下がっておらず、人間の聴覚感度特性に合わせてなだらかに上に伸びているおかげもあってか、実際の聴感上も、EDM や海外の Electronic Pops などでよく使われる 30Hz 付近の音もしっかり聴こえ、さまざまな音源の「臨場感」をより感じやすくなっています。
解像度やディティール表現、低音域からサブベースの歪み感も、この価格帯では自分が知る範囲では全く不満のないレベルです。同等の価格帯の日本のメーカーの機種とは、そもそも次元が違うレベルで一線を画すクオリティと感じます。
もちろん数倍以上の価格の機種と比べれば解像度やディティール表現などはそれなりですが、価格帯から考えると、帯域バランスや質感表現の素直さもあって、コストパフォーマンスが非常に高い機種と感じます。
空間表現:イヤーピースによって劇的に変化!
NiceHCK DB2、開封時から装着されているグレーの球形のイヤーピースで聴くと、音の空間が非常に狭く感じ、各音像が奥行方向で重なって頭に張り付くような聴こえ方をしていました。これは個人的には衝撃的な聴こえ方で、いわゆる「頭内定位」と呼ばれる状態に近いのかもしれません。
しかし、同梱されているもう一種類の AET07 によく似たイヤーピースに換装してみると、途端に音の空間が広がり、音像がちゃんと頭から離れて立体的に定位するようになりました。ただ、それでも音の空間はそれほど広いわけではなく、適度な立体感を感じられる程度には空間の広さがあるという印象です。
ここまでイヤーピースで空間表現が大きく変化する機種は今までほとんど経験がなかったので、これはちょっと驚きました。
もちろん個人差はあると思いますが、それぞれの音の好みに応じてイヤーピースを選んだり、他の種類のイヤーピースを試したりと、自分好みの音に合わせやすい機種とも言えるかもしれません。
低音域〜サブベース
低価格帯の機種で、無理に低音域〜サブベース域を適切な音圧 (聴覚感度とは別な点に注意) で再現しようとすると、低音が量はあってもぼやけたりしてブーミーさで台無しになってしまうことが多くありますが、NiceHCK DB2 は注意深く設計された「グラフェン+チタンコート」のダイアフラムの特性のおかげか、ブーミーさを一切感じず低音過多でも低音不足でもない、人間の聴覚特性に沿った絶妙なバランスで再現されます。
ただし、人間の低音〜サブベース(超低音)の、他の周波数に対する相対的な感度は音量によって変化するため、ボリュームを上げ過ぎたり、音楽制作側が想定する聴取音量次第では、低音・サブベース過多になる場合があったりはします。
正直、この価格帯の機種でこのレベルのクオリティでサブベースが再現できる機種を聴いたのは初めてでした。
ここ最近、ようやくいくつかのIEMブランドがグローバル音楽市場におけるサブベースの重要性を認識し始めたのか、サブベースの出力バランスとクオリティの高い再現性に注力するようになったのは、(日本を除く) 世界のハイエンドを含むオーディオ市場の動向とも一致し、個人的には歓迎すべき傾向です。
中音域
NiceHCK DB2 の音で最初にやや特徴を感じたのは、中音域でした。DB2は 1D + 1BA のハイブリッドドライバー構成の機種でもあり、低域を担う1Dと高域を担う1BAのクロスオーバーがこの帯域にあるのではと予想されますが、特にクロスオーバーによる違和感はほとんどありません。
それとは別に、ボーカルを際立たせるためなのか、中高音域がやや目立つような印象があり、そこにこの機種のチューニングの特徴を感じます。
高音域
高音域は比較的素直な特性で、6kHz付近の刺さりもなく8kHz付近のピークもほぼなく、鮮烈なキレのあるアタックもしっかり鳴る印象ですが、派手すぎずやや明るめのキャラクターで、聴きやすい高域に感じます。
総評
NiceHCK DB2 は、パッケージイラストのようにアニメ系音楽に特化したサウンドでもなく、世界中のあらゆるジャンルの音楽でも破綻することのないかなり真っ当な設計とチューニングで、イヤホン本体には最上位機のシェル構成を採用するなど妥協がなく、その完成度やビルドクォリティは価格に対して非常に高い製品と感じます。
また、イヤーピースによって空間表現が大きく変化する特性は興味深く、2種類の付属品以外にもさまざまな市販のイヤーピースを試して好みの音場表現を探す楽しみもありそうです。
ケーブルも付属のものでも充分な音質と使い勝手のよさがありますが、より上位グレードのものにリケーブルすることで好みの音を探ってみたりと、本体以外のパーツを変えることで確実にグレードアップできる、お手頃価格ながら完成度の高い機種としてかなり「遊べる」機種だと感じます。
完全ワイヤレスイヤホンも数千円の価格の安いものが出てきていますが、現状では音質はやはりそれなりで、この機種のような有線イヤホン/IEMの音質には遠く及ばないものばかりです。
NiceHCK DB2 は、手軽に高音質を楽しむだけでなく、低価格帯ながら、イヤーピースやケーブル、ドングルDACやUSBケーブル、スマホやDAPなど再生機器の種類による音の違いが実感できるような、本体の基本性能やレスポンスの高さが際立っているように感じます。
3色のカラーバリエーションと美しい外観の他、ポリカーボネイト製シェルなど強靭な素材による耐久性の高さも期待できそうで、NiceHCK ではこの機種に互換のあるケーブルも多く販売していることなどからも、「パッケージデザインさえ気にならなければ (笑)」おすすめおよび友人等へのプレゼントにもおすすめできる機種になりそうです。可能なら、Waifu/美少女イラスト以外のクールなデザインのパッケージ版もぜひ出して欲しいと思える機種です(笑
Amazon Japan
マイクなし
マイク付き