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TinHiFi T2 DLC レビュー 〜精緻なディティール表現とほぼ完璧な周波数バランス

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このレビューは、HiFiGo 様より試供品を提供いただいてのレビューですが、製品の評価は個人的に率直な感想を記載しています。

前回に引き続き TinHiFi の IEM レビューですが、今回紹介するのは、TinHiFi の代表的な円筒形アルミニウム合金筐体のエントリーモデル「TinHiFi T2」(2017年リリース) から続く「T2」シリーズの最新モデルとなる、今年2022年リリースの「TinHiFi T2 DLC」です。

MSRP(メーカー希望小売価格) は $69.00USD。日本の Amazon では現時点で7〜8千円台で販売されていますが、やや硬質な音質傾向で、特に解像度の高さや周波数レンジの広さを重視する方におすすめ。U10000 (1万円以下) の価格帯でのベンチマークになりそうな優秀な機種という印象です。

TInHiFi T2 DLC のスペック

第4世代 DLC (Diamond-Like Carbon) コーティングダイアフラム

Image credit: TinHIFI

「DLC」はダイアモンドに近い硬度をもつ素材 “Diamond-Like Carbon” で、ダイナミック型ドライバーのダイアフラム(振動板)に採用されているのをよく目にしますが、T2 DLC では第4世代のDLCコーティングを施したPUポリマー複合材ダイアフラムを採用しているとのことです。さらに、ダイアフラムのエッジを独立懸架式 (independent hanging edge) とし、レスポンスを高めているようです。

基本スペック

その他の基本スペックは次の通りで、シンプルなアルミニウム合金筐体は従来より軽量化され、取り回しのよい銀メッキ5N銅線が付属します。

Image credit: TinHIFI

尚、TinHiFi T2 シリーズ従来モデルおよび T2 EVO は MMCX 端子を採用していますが、T2 DLC では 2pin 端子が採用されています。この 2pin 端子は本体側とケーブル側双方に円形の樹脂製接触面があるため、溝なし角形のものよりは安定感はあります。

ただ、IEM用端子としての安定性や信頼性、互換性等の点では同軸コネクターの MMCX の方が物理的嵌合が強固かつ外からの応力に強いため、今回なぜ溝やカバーのないタイプの 2pin 端子を採用したのかは謎です。パーツやケーブル市場の動向は個人的に詳しくありませんが、単純に同時期に製造した他機種向けに多く仕入れた端子を活用するために採用したのかもしれません。

TinHiFi T2 DLC のパッケージと内容

7.5cm × 約14.2cm のコンパクトな紙箱に、辞書のような立派なケースが収められています。

フタを開けると T2 DLC のアルミハウジングが姿を表します。

パッケージ内付属品一覧

パッケージ内には本体とケーブル、イヤーピースがシリコーン製とウレタン製フォームタイプの2種類、説明書と保証カードが収められています。ちなみに、キャリングポーチは付属していませんでした。

イヤーピースはシリコーン製がS/M/L各2ペア、フォームタイプが1ペア付属

やや謎な部分ですが、シリコーン製のイヤーピースが、全く同じものが2セット付属していました。先日レビューした TinHiFi T1s に付属していた「球状」と「傘型」のイヤーピースうち、「球状」の方が2セット付属しています。
他にフォームタイプが1セット付属しています。

装着感・付属ケーブル

筐体が小型で、ほとんどの方の耳にうまく収まるのではと思います。ただし、付属ケーブル側のプラグ部分が長めのため、耳が小さい方の場合、写真のように耳の上にケーブルが浮き気味になります。自分もややケーブルが浮く状態になりました。

付属のケーブルはしなやかでクセもつきにくく、取り回しは良好です。左右のケーブル分岐部から3.5mmプラグまでの間は凹凸も少なくタッチノイズも「並」程度で、際立って気になるほどではありません。

TinHiFi T2 DLC の音質レビュー

予め60hほど、あらゆる波形を含む試聴用プレイリスト(主にFLACデータ)のランダムリピート再生でバーンイン後に音質を評価しています。

Spotify版: Audio Check Express - playlist by azalush | Spotify

主な試聴環境



全体のバランスや質感

聴感上限りなく「フラット」に近い周波数特性

まず一聴して、解像度が高く超高音域から超低音域まで音の濁りないクリアな音に驚きました。また、特に突出した周波数帯もなく、ニュートラルなバランスで非常に聴きやすい音に感じます。トーンジェネレーターで試してみると、20Hz付近の超低音域から15kHzを超える超高音域まで、際立った突出や落ち込みがほとんどなく、人間の聴覚の周波数特性 (等ラウドネス曲線) を考慮しても、聴感上の特性はほぼ限りなくフラットに感じます。

日本の音楽を主に聴く人にとっては、低音域〜超低音域がやや強く感じるかもしれませんが、EDMやパイプオルガンなど周波数レンジの広い音源を聴くと、スタジオのラージモニタースピーカーの低音〜超低音の迫力ある音が、ほぼそのままのバランスかつ低歪で聴こえるように感じます。(あくまで個人の感想です)

Jan Kraybill - Organ Symphony No. 6 in G Minor, Op. 42, No. 2: I. Allegro
▶️ Stream: Organ Symphony No. 6 in G Minor, Op. 42, No. 2: I. Allegro by Jan Kraybill, Charles-Marie Widor
パイプオルガンの20Hz以下の音も含む超ワイドレンジな曲ですが、T2 DLC では20Hz付近の音もしっかり鳴ります。

価格帯を疑うレベルのディティール表現力

また、TinHiFi T2 DLC は、1万円未満の価格帯ながら、細かな音のディティールやテクスチャまでしっかり表現できているのも驚きです。
楽器の細かな表情や奏者の息遣いも聴こえ、高域が派手になりすぎずディティールまでしっかり描写されるイメージです。

VARGO feat. Duncan Wong - Dear Friends Reprise
▶️ Stream: Dear Friends - Reprise by VARGO, Duncan Wong
ボーカルや声の細かなニュアンスの再現度が高く、価格帯を忘れそうになります。

「やや硬質な音色傾向」は人を選ぶかも?

ただ、音質面で唯一気になるのは「音色がやや硬質な傾向」がある点。おそらくドライバーに採用された DLC コートダイアフラムの特徴でもあり、そもそも $69 のイヤホンにそれを求めるのは酷ですが、特に ESS の最近のDAC/AMP (ES9219C, ES9281AC PRO等) 内蔵アンプ出力を使うドングルDACでは、その硬質さが強調されやすい印象があります。
特にアコースティック楽器の音が無機質に聴こえる場合があったり、ボーカルの艶かしさを求める用途には向かないかもしれません。

ただ、音楽ジャンルによっては逆にそれがメリットにもなり、フレッシュで鮮烈なボーカルやサウンドの曲や、Electronic 系、TECHNO 系では T2 DLC の硬質なサウンドがむしろ活かされ、鋭いアタックやメリハリあるサウンドを楽しめます。

また、AKM や Cirrus Logic 製の DAC/AMP や独自のヘッドホンアンプ回路を搭載した機種など、音色がもともとナチュラル傾向だったり暖色傾向の機種で聞いた場合は、硬質さが影を潜めて自然な表現豊かな音になったりもするので、組み合わせを色々試してみるのもよいかもしれません。

空間表現

空間表現/サウンドステージは、音源の持つ広さを的確に反映する印象です。音質の印象として硬質で音の細かなディティールの表現に優れていると記しましたが、その特徴が現れやすいのが音の空間でもあり、各音源ごとの空間の広さがつかみやすく、音像定位もかなりシャープにピンポイントで定まる印象です。

BT - Communicate
▶️ Stream: Communicate by BT, B T
「シンセサイザーの魔術師」の異名を持つBTが2003年にリリースしたこの曲。個々の音の空間上の配置や動き全てが立体的にシャープに定まり、サブベースから超高音域まで音の特性に合わせて緻密に計算された空間を感じられます。

空間表現が的確すぎる機種の中には、日本のポピュラー音楽の狭い音の空間を、外から眺めるようなこじんまりとした表現をしてしまう機種がありますが、TinHiFi T2 DLC では、日本のそうした音源でも音空間の中に没入する形で違和感なく聴ける印象です。

高音域

高音域の歯擦音の刺さりやピーキーな帯域がほぼないため、最近の派手な音の機種と比べると大人しく感じるかもしれませんが、聴感上ほぼフラットに近い周波数バランスになっています。

8〜9kHz 前後に、外耳道長など個人差によって異なる「外耳道共鳴」によるピークが「わずかに」ありますが、各メーカーがこの原理的に避けられない共振によるピークをいかに抑えるか苦心している中、何事もないかのように回避できているのは、TinHiFi の音響設計の巧みさが伺えます。

中音域

中音域も特に目立つ周波数帯はなく、3kHz のピークも非常になだらかで際立ってはいません。
他の機種と比べるとボーカルが物足りないのでは?と思うかもしれませんが、シンプルな円筒形のハウジングと、入念に設計されたドライバーのキャビティのおかげか、音が混ざり合うことがなく一音一音がクリアに聴こえます。そのため、音が重なり合っていてもボーカルやその他の楽器などの音それぞれに存在感があり、ボーカルの帯域や中高音域に多くの音を重ねて敷き詰める傾向がある J-Pop などでも、ボーカルが埋もれてしまうことはおそらくないでしょう。

低音域・超低音域

先に「聴感上限りなくフラットに近い周波数特性」と記しましたが、低音域〜超低音域(サブベース)のうち、40Hz前後が若干ブーストされたようなチューニングになっています。
これは、現代の「日本以外の」世界のポピュラー音楽のリズムを刻む「キック」の帯域は「40〜50Hz」になっているため、リズムを際立たせるためと思われます。

Avril Lavigne - We Are Warriors
▶️ Stream: We Are Warriors by Avril Lavigne

そのため、日本のポピュラー音楽でキックの帯域にあたる、80Hz〜100Hz 付近はそれほどブーストされておらず、日本のTVで流れるようなメジャーな音楽を聴くと、低音が物足りないように感じる人もいるかもしれません。

その代わり、海外のポピュラー音楽にはバッチリで、低音のボヤけやボワつきといった低価格帯の機種にありがちな歪感もほぼ皆無なので、力強い歪感の少ないビートを気持ちよく楽しめます。

総評

TinHiFi T2 DLC は、日本でも「実売1万円未満」の価格ながら、この価格帯では他にあまりない (自分が知らないだけw) ほぼパーフェクトな周波数バランスで、モニター的な使い方もできそうです。

全体的にやや硬質でシャープな音の傾向はありますが、これは再生機器次第でもかなり変わり、AKM製DACを搭載した Shanling UA3 などでは「硬さ」がとれて非常に心地よい音になったので、色々組み合わせを変えて試してみるのもよいかもしれません。

T2 シリーズ従来モデルと比べ、イヤホン本体側コネクターが独特な円形の 2pin 端子になっている点が不安要素にはなりますが、付属のケーブルを使う限りはプラグ部に応力がかかっても中のピンが曲がることはほとんどないと思われるので、それほど問題にはならないかもしれませんが、リケーブル愛好家の方はその点要注意です。

TinHiFi T2 DLC は、特徴的なクセも少ない音なので、この価格帯での一つの「リファレンス」や「ベンチマーク」として、他の機種との比較対象にも使えそうな安定感とモニターライクな雰囲気があり、イヤホン沼に浸かりすぎて音の基準がよくわからなくなってしまった方にも、初めて有線イヤホンを買ってみようという方にもオススメできそうな機種です。

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